そんな田口勝朗の思い付きの戯言を実現させちゃったドキュメント。
------------------------------------------------------------------------------
前夜のイベント前から朝まで大雨が続いた。
天気予報も無情な通告。
憂鬱な気分だが、山に向かう車内ではヤケクソ気味のFM TAGUCHI。
それはそれで楽しく、何とか到着。
ゲレンデの様子をこっそり覗きにいくと、すぐに誰かに見つかってしまった。
イベント中の告知で集まっていた好き者たちだ。
それでも雨足はさらに強まった。
天候、雪質、二日酔い…誰かの「帰ろうか。」の一言を待つ、あの空気。
言い訳しか思い浮かばない中、老眼が進む眼を光らせ、田口勝朗は言った。
「さあ、着替えよう。」

かくして、これまで最悪の状況で田口勝朗の27年目のシーズンが始まる。
初滑りのセットアップは、green clothingのPATCHWORK JACKETにKEVLER PANTS。
そして、何ともデタラメな形のDEATH LABELのボードだ。

リフトに乗れば、自然と全員のテンションが上がる。
この時点でミトンが両方とも左手だったことに気付いたようだが、そんな事はお構い無しに「あそこ、バンクに使える!」「レギュラーバックサイドが続いてる!」とヒットポイントを探している。

いよいよ、ライディング開始。
先頭を切って、狭くて穴だらけのぬかるんだコースの外側を攻め続ける。
同じラインを追尾する者、近付いてアピールする者、置き去りにされる者…
ここには、パウダーもパークも無いが、むしろそれを楽しむこと。
それこそが田口勝朗の提唱する「普遍的スノーボーディング賛歌」なのだ。
一本目を滑り終わると、不思議と雨雲が抜けていた。
全員が笑顔だった。
田口勝朗の眼は、再び優しく光っていた。